めも箱

サラリーマン研究者のブログ

HSPを活用したより安心な溶剤の設計方法

 有機溶剤の一種であるジメチルホルムアミド (DMF) は、コーティング産業において特に重要な溶剤として知られており、なかでもポリウレタンの溶解に広く使用されています。しかし、最近では、工業プロセスで使用される特定の有機溶剤の毒性が大きな問題となっており、より安全な溶剤への変更が求められています。

 以下の論文では、2種類のポリウレタン(Desmopan®、Desmocoll®) をより安全な溶剤でコーティングできるよう、ハンセン溶解度パラメータ(HSP)を用いてDMFの代替となる溶剤を設計しています。

Identifying sustainable alternatives to dimethyl formamide for coating applications using Hansen Solubility Parameterswww.sciencedirect.com


 ざっくりとした手順と結果は以下の通りです。

手順
 1)ポリウレタンのHSPを求める。
 2)ポリウレタンとDMFのHSP距離を求める。
 3)混合する溶剤の候補を選定する。
 4)2と同じ(もしくはそれ以下の)距離となる混合比を決める。

結果
 Desmopan®) シクロヘキサノン:DMSO=54:46
 Desmocoll®) シクロヘキサノン::ペンズアルデヒド=81:19

 いずれの混合溶剤もDMFよりも毒性が低く、DMFと同様のコストと物性(蒸発速度や沸点)であることと、得られたコーティングフィルムの特性もDMFを使用した場合と同じであったことから、溶剤設計にHSPが有効であると結論付けています。

溶けにくい化合物の親和性評価

 ハンセン溶解度パラメータ(HSP)は化合物の性質を表す値で、化学的な相性の指標として活用されています。

 HSPを実験的に取得する方法として、様々な溶媒に対する親和性を評価する方法があり、溶解度測定はその一例です。

 その方法として、例えば、UV-Vis分光光度計を使用するケースがあります。これは、濃度既知の溶液のピーク強度から作成した検量線をもとに、濃度未知の溶液の濃度を求める、という方法です。HSP取得の観点で考えるならば、複数の溶媒で溶解度を測定し、その結果をもとに化合物のHSPを求める、ということになります。

 しかし、この方法には困難な点があります。溶けにくい化合物だった場合、検量線が作成しにくくなります。また、多種溶媒での測定のため、溶媒ごとに検量線を作成する必要があり、かなりの時間と手間がかかるでしょう。


 次の論文では、良溶媒に対する不溶分の定量という形でこの課題を回避しています。

Determination of Hansen solubility parameters of water-soluble proteins using UV–vis spectrophotometrywww.sciencedirect.com

手順
 ① 一定量の化合物を溶媒に添加する。
 ② 一定時間経過した後、不溶分を回収する。
 ③ 回収した不溶分を、良く溶ける溶媒 (良溶媒) に加えて溶かす。
 ④ ③の良溶媒で検量線を作成する。
 ⑤ ③の吸光度と④から、不溶分の濃度を求める。
 ⑥ ①と④の差から、溶解度を求める。
 ⑦ ⑥の結果をもとにHSPを解析する。


 この方法では溶媒に対する親和性が数値として求まるため、溶媒間の序列をより詳細に評価することも可能と考えられます。

冬かれて 休みしときに 深山木は花 咲く春の 待たれけるかな

おみくじの和歌から。ちなみに大吉でした、やったね。

訳によると、以下とのこと。

何事も心を正直に強く持ち、物事に退屈せず信心怠らず勉めれば、時到りて後にはおおいに仕合せよくなります。騒がず時を待ちなさい。

昨年は部署が変わり、非常に忙しくさせていただきました。開発を手掛けた技術が、まだよちよち歩きの段階ではあるけれど、思った以上にいろんな人に可愛がってもらった気がします。「こんなん出来るんかいな…」ということに取り組めた結果だと思います。実務をやっていただいている後輩にも感謝。色々詰め詰めで対応いただきました。

こうしてみると、去年のおみくじ意外と当たってかもしれません。

渦を巻く 谷の小川の丸木橋 渡る夕べの ここちするかな

初めは危い谷の小川の橋を渡る様な心配事があるが、驚き迷うことはありません。後には何も彼も平和に収ります。凡て小さい事も用心してすればよろしい。

「生産性」「粗利」といった単語が気になるところですが、今年も飛躍できる年にしたいですね。

専門書読書おける単純接触効果(乱読のススメ)

 ここ一年、半導体業界のお客さんとの取引が増えました。あまりにも取引が増えたので、自分の仕事のどこに親和性があるのか知りたくなりました。業務上特に必要ではないのですが、お客さんがなにをしているか、自分が見当違いなことをやっていないかの確認の意味も込めて、最近は業界の勉強をしています。

 

 

 

 

 下の本ほど専門的な内容になります。最初の2つは概要的な理解にちょうどよく、図書館で借りたものを読んでいます。最後の1冊は私費で購入しました。

 

 読み始める前から予想していましたが、まず言葉が分からない。そしてその数がなんと多いことか…。

 

 性格上、どこかひとつ分からない部分があると読み進められなくなって挫折します。以前は、そのことを自覚していながらなかなか脱却できずにいましたが、この頃はとりあえず読む(というより、見るに近い)ことを優先させています。

 

 1冊の一部を読んで別の1冊を読む。もう一度最初のを読んでまた別の1冊を読む。章も飛ばし飛ばしで、読んだ気がするけど最初からまた読む…、の繰り返し。

 

 不思議なもので、何回も読(見)つづけていると、「あの本のあそこにも書いてたな」と頭の中でリンクできるようになったり、リンクできなくても、読みながら「これ前も見た!」と進研ゼミ的な気づきが生まれます。

 

 そうして関連付けられた項目から専門的な本できちんと理解し、それを足場にしながら他の理解度を上げていく。そんなステップを踏みながら、半導体業界の一部をざっくりと掴めるようになった気がします。

 

 何度も見続けて対象を知っていく、心理学用語の「単純接触効果」を思い出しタイトルにしてみました。

振り返り2021

 あけましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いします。


年が明けてすでに4日経っていますが、以下3つの視点で2021年を振り返ります。
昨年の記事で挙げた項目をベースにまとめてみました。
 *昨年の記事はこちら
nagotsch.hatenablog.com

KPT

What we should Keep.(続けるべきこと)
Where we are having ongoing Problems. (抱えている問題)
What we want to Try in the next time period. (次にトライしたいこと)

KPT法の詳細はこちら
seleck.cc


■ Keep(できたこと、続けたいこと)

☑(オンライン)学習

仕事に関する技術的な通信講座を私費で受講しました。
決して安い講座ではありませんでしたが、仕事に活かせている実感が得られたのが良かった。

☑(オンライン)飲み

 大学時代の知人、後輩と。あとは、自主開催ではありませんが仕事の後輩の歓迎会で交流できました。
暮れの方は対面でできる機会にも恵まれました。

☑アウトプット

 技術記事を2つ更新しました。少ない記事数ながら、専門家の目に留まったことは2021年を代表するトピックスだと思います。

☑腹決め

 「アウトプット」で取り上げている技術を、さらに深堀りしていきたいと実感した1年でした。

☑語学学習

 2年連続でTOEICスコア自己最高を更新し、会社から報奨金もいただきました。
https://nagotsch.hatenablog.com/entry/2021/08/29/224213

☑運転免許取得🆕

 恥ずかしながら、30代も半ばに差し掛かってようやく取得しました。それも無駄にMTで。
取得後も乗る機会があったので、一般道に対してはようやく慣れつつあります。
 *ただしATに限る。

■ Problem(できなかったこと、課題)

✘オンライン学習(統計検定)の効果測定

 「なんとなく統計って大事だよね」という思いはありましたが、優先順位がそこまで高くなかったため未実施でした。

✘オンライン読書会

 こちらも未実施。

△趣味探し

 楽器演奏以外の活動で、と思うも、これといったものは見つからずでした。とりあえずは、ブログ執筆に設定。

■ Try(改善)

ブログの技術記事拡充

 腹決め、趣味はブログ執筆と言いながらネタ2つとは残念すぎるので、最低でも5つは書きます。

読書会(β版)の開催

 自分の読書力を高めるためにも、必ず開催します。
ただ、いきなり本格的な会を立ち上げると意気込むと失敗しそうなので、興味を持ってくれそうな人と1on1で開催しようかと思っています。

運転技術の向上

まだまだ苦手意識のある高速走行と駐車にこなれます。